ヨタカを見た話

野鳥探見隊記録より
「あっ!ヨタカだ!!」

今回は,バードウオッチングの話です。山の話は出てきませんので悪しからず。

 この話は,野鳥探見隊の結成間もない頃の話です。
 初めにお断りしておきますが,「探見隊」は「探険隊」の間違いでありません。
野鳥を探し見る隊です。私のような平和主義者は(単に臆病者のウワサもあるが)冒険活劇のような探検は決してやりません。


 隊の構成員は正規隊として隊長が冷静沈着思考力十分な,見方を変えると優柔不断なこの私で,隊の炊事班補佐・フィールドスコープ設置係・運転手・カメラマン等々を兼任しております。

 女房役の副隊長は私の本物の女房で,炊事班長・フィールドスコープ覗き係・運転助手兼運転手・なんでも記録係を兼任し,決断力に優れ,小事にこだわらない,言い換えれば後先考えずに結論を下し,しばしば道路を間違えたりする性格であります。
 思考力十分の隊長と決断力に優れた副隊長の意見がぶつかり,結果的に判断をあやまることは日常茶飯事ですが,さすがに山歩きの行動中には冷静沈着なリーダー兼隊長が丸く納める(たいがいは副隊長の意見どおり)ので,別々の方角に進むことはないのです。
 この探見隊が分裂せずに続いているのは,隊長と副隊長だけなので一人になると探見隊と呼べなくなるからです。探見人や探見放浪人ではどうにも雰囲気が盛り上がりません。

さて構成員の続きですが,この正規隊の他に臨時隊員で構成され,最近ではMさん,Kさん等4人でしょうか。どういう訳か全員女性で,隊長の女性に優しい性格が影響していると思われますが,
副隊長が言うには,
「単に女好きなだけだろう」と手厳しいことを言います。

 さて,この探見隊も今では歴史を重ね,隊長も副隊長もいっぱしに能書きを言うようになりましたが,隊編成時にはずいぶん恥ずかしい思いを繰り返しております。
 今から8年ほども前になりましょうか,その時のことが今でも鮮明に思い出されます。

平成3年5月11日午後11時に2台の車で広島県芸北町深入山山麓に到着した。
 1台の車は隊長の運転で副隊長が同乗し,もう1台の車は臨時隊員のKが運転してきた。Kは当時の私の上司なので呼び捨てにするのははばかられるのだが,私が隊長だから…・。
ウ〜ンやはりKさんと呼ぶことにしようかな。やはりKかな。(このあたりが隊長の優柔不断)
 車の中で仮眠して5月12日夜明けとともに,1台の車に隊長,副隊長,K隊員が同乗し,いよいよ野鳥探見隊の行動開始である。この日は野鳥のベテランのK隊員がいるので,隊長,副隊長は大張り切りだった。
 午前9時半頃,臥竜山という山の中腹まで来たとき,隊長の私は思わず車を止めて呟いた。
「アレ〜ッ?鳥にそっくりな枯れ枝があるぞ」
 車道から2m位奥のところだった。

決断力に優れた副隊長が
すかさず
「そこまで車をバックさせて」
近づいてみると実に鳥にそっくりで,
ベテランのK隊員が
「これは誰かがイタズラして木の鳥を置いたんでしょう。ヤヤヤッ!!これは本物だ!!」
と同時に隊長の私が叫んだ。
「あっ!ヨタカだ!」
さあ,それからが大騒ぎで,「カメラだ」,「ビデオカメラだ」,「静かにッ!」,「落ち着けッ!」と大声を出し,
「私助手席からじゃ見えない。外に出る」と叫ぶ副隊長。
「ドアを開けるな,音がして逃げるぞ」と怒鳴る自分勝手な隊長。

今思うとヨタカがよく逃げなかったものだと思う。それほど3人とも興奮し大きな声を出していたのである。

後で振り返ると,私とK隊員はカメラとビデオカメラを覗いていてよく観察できず,いち早く車外に出た女房いや副隊長だけが双眼鏡でじっくり観察できたのである。

このことがあってからは,山登りの最中に空をキョロキョロ,地面をキョロキョロで,山登りに人の3割り増しくらいの時間がかかるようになった。
 ちなみに2度目にヨタカに会えたのは,それから6年後の山形県の飛島だった。


 

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